たのしみは 昼寝目ざむる 枕べに ことことと湯の
煮えてある時
煮えてある時
橘曙覧
(たのしみは ひるねめざむる まくらべに ことことと
(たのしみは ひるねめざむる まくらべに ことことと
ゆの にえてあるとき)
意味・・私の楽しみは、昼寝から目がさめると、枕の
意味・・私の楽しみは、昼寝から目がさめると、枕の
そばの火鉢にかけた鉄瓶が、ことこと、こと
ことと煮え立った音を立てている時だ。夢の
中の恍惚感を、この湯の音が呟(つぶや)いて
いるよに感じせれる。
「盧生一炊の夢」を念頭に詠んでいます。
中国の唐の盧生という青年が立身を志して、
旅先の邯鄲(かんたん)という町で仙人に枕を
借りて一眠りする間に一生の富貴栄華の夢を
見るが、目覚めると宿の主人が炊(かし)いで
いた黄粱(こうりょう・粟飯)はまだ煮えてい
なかったという故事。人間の一生は短く、栄
枯盛衰のはかないことのたとえであるが、自
分が立身出世する夢を見ることは楽しいもの
です。
作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1868。紙
作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1868。紙
商の長男に生れるが、家業は異母弟に譲り隠
棲。福井藩主に厚遇された。
出典・・岡本信弘著「独楽吟」。
出典・・岡本信弘著「独楽吟」。