田を売りて いとど寝られぬ 蛙かな
立花北枝
(たをうりて いとどねられぬ かわずかな)
意味・・春の蛙は田んぼなどで雄が雌を求めてやかましく
鳴きたてる。夜になってあたりが静かになると、
門田で鳴きたてる蛙の声が耳に入って寝付かれない
ほどである。それでも自分の田である場合は文句も
いえずがまんもしたが、他人に売り渡してしまうと
その鳴き声がうるさくて眠れない。
自分の失敗で痛い目に会うのは我慢が出来るが、人
のせいで痛い目に会うのは我慢出来ないものである。
注・・いとど=ますます、いよいよ。
門田=家の前の田。
作者・・立花北枝=たちばなほくし。?~1718。刀研ぎ業。
芭蕉に師事。
出典・・小学館「近世俳句俳文集」