1705

 
降る雪は あはにな降りそ 吉隠の 猪養の岡の
寒からまくに
                 穂積皇子

(ふるゆきは あわになふりそ よなばりの いかいの
 おかの さむからまくに)

意味・・降る雪はそんなに積もらないでくれ。吉隠の 
    猪養の岡に眠っている愛しい人が寒いだろう
    から。

    但馬皇女と穂積皇子は愛し合う仲でしたが、
      親や周辺から反対されて結ばれない恋でした。
    そんな中、但馬皇女は亡くなってしまった。
    穂積皇子が悲しみ泣きながら詠んだ歌です。

 注・・あはに=数量の多いこと。
    吉隠(よなばり)の猪養(いかい)の岡=但馬皇女
     の墓地。吉隠は初瀬の近辺、猪養はその東北
     の山麓。
    まく=推量の助動詞。
    但馬皇女=たじまのひめみこ。708年没。天武天
     皇の皇女。

作者・・穂積皇子=ほずみのみこ。715年没。天武天皇の
    第五皇子。

出典・・万葉集・203。