1849

隠りのみ 居ればいぶせみ 慰むと 出で立ち聞けば
来鳴くひぐらし
                 大伴家持

(こもりのみ おればいぶせみ なぐさむと いで
 たちきけば きなくひぐらし)

意味・・家にひきこもってばかりいて気が滅入るので、
    気晴らしに外に出て耳を澄ますと、もうひぐら
    しが来て鳴いている。

    作者の鬱情は、ひぐらしのもたらす気分の中に
    溶け入り、心が澄みゆくのであった。
    
 注・・いぶせみ=うっとうしい、はればれしない。
    ひぐらし=蜩。せみ科の昆虫。夏から秋の夕方
     「カナカナ」と澄んだ声で鳴く。

作者・・大伴家持=大伴家持。718~785。大伴旅人の
            長男。越中(富山)守。万葉集の編纂を行う。

出典・・万葉集・1479。