1864

 
荒し男の いをさ手挟み 向ひ立ち かなるましずみ
出でてぞ我が来る
                 防人

(あらしおの いおさだはさみ むかいたち かなる
 ましずみ いでてぞあがくる)

意味・・勇ましい男子が矢を手に挟んで狙いを定め、
    ぴたりと引く手を止めるように、妻が諦めて
    て鎮まるのを見はからって、私は防人にと出
    かけて来ました。

    諦めきれない妻がとうとう観念したので、防
    人として旅立ちが出来たが、辛さは私も同じ
    事だ・・。

 注・・荒し男=粗暴な男、勇ましい男。
    いをさ=狩の矢。
    かなるましずみ=か鳴る間静み。騒がしい音
     を静める。

出典・・万葉集・4430。