1865

言にして いへば遥けし 眼にしみて 昨日かも見し
ことと思ふに
                                             窪田空穂

(ことにして いえばはるけし めにしみて きのう
 かもみし こととおもうに )

意味・・言葉にして言えば、それは遠い以前のことで
    ある。今もはっきりと眼に残っていて、つい
    昨日見たのでもあるかのように思われるのに。

    遥か昔の事であっても、今もはっきりと思い
    出す事があると詠んでいます。
 
 注・・言にして=言葉、口に出して。
    眼にしみて=はっきりと眼に残っていて。
    昨日かも見し=「か」は疑問を「も」は詠嘆
     を表す。つい昨日見たような。

作者・・窪田空穂=くぼたうつほ。1877~1967。早稲
    田大学卒。早稲田大学教授。