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 大船に 真楫しじ貫き この吾子を 唐国へ遣る
斎へ神たち
                 光明皇后

(おおぶねに まかじしじぬき このあこを からくにへ
 やる いわえかみたち)

意味・・大船に左右の楫を隙間なく取り付けて、この
    いとしい我が子を、唐の国へ遣わします。ど
    うか神様がた、大事に守ってやって下さい。

    皇后の甥である藤原清河を遣唐使に送る時に
    詠んだ歌です。当時の遣唐使は国家的な大事
    業で、生死をかけたものであった。清河は任
    を終えて阿倍仲麻呂と同船して帰国の途中に
    遭難して帰国出来なかった。

 注・・楫=船を漕ぐ道具。かい・ろなど。
    しじ貫き=隙間なく貫き並べる。
    吾が子=遣唐使の清河は光明皇后の甥なので
     親しみを込めて言った。
    斎(いわ)へ神たち=穢(けが)れを取り除いて大
     切に守る意。

作者・・光明皇后=こうめいこうごう。700~760。聖
    務天皇の皇后。

出典・・万葉集・4240。