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 人も 馬も 道ゆきつかれ 死ににけり 旅寝かさなる
ほどの かそけさ
                   釈

(ひともうまも みちゆきつかれ しににけり たびね
 かさなる ほどのかそけさ)

意味・・人も馬も長い道を行き疲れて死んでしまったの
    だろう。こんな事をこれほど深く心に感じるの
    は、自分自身が長い旅寝を重ねている間、かっ
    てこの地を旅をした人や馬と同じ思いになるか
    らであろうか。しんみりとした思いになってく
    る。

    民俗採集の旅で長野県、愛知県、静岡県と旅を
    している時に詠んだ歌です。詞書には「数多い
    馬塚の中に、ま新しい馬頭観音の石塔婆の立っ
    ているのはあわれである。又殆ど、峠毎に旅死
    の墓がある。業病の姿を家から隠して、死ぬる
    までの旅に出た人などもある」と記されていま
    す。

 注・・かそけさ=幽けさ。ひっそりしている。

作者・・釈空=しゃくちょうくう。1887~1953。本名
    折口信夫。国学院大卒。古典学者、民族学者。

出典・・桜楓社「現代名歌鑑賞事典」。