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 かくばかり 恋ひつつあらずば 高山の 磐根し枕きて
死なましものを
                   磐姫皇后

(かくばかり こいつつあらずば たかやまの いわね
 しまきて しなましものを)

意味・・ああ、この胸をかきむしられるような苦しさ。
    こんな思いをするよりも、いっそ、死んだほ
    うがまし。山深い墓の中に葬られ、岩を枕に
    眠った方が、ずっと楽になるでしょうに。

    夫の仁徳天皇が磐姫皇后に愛情をしめさずに、
    美人の黒比売(くろひめ)と浮気しているのが
    耐えられずに詠んだ歌です。
 
 注・・かくばかり=これほどまでに。
    恋ひつつあらずば=恋い焦がれてなんかおら
     ずに。

作者・・磐姫皇后=いわのひめのおおきさき。仁徳天
    皇の皇后。

出典・・万葉集・86。