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 つれづれと 空ぞ見らるる 思ふ人 天降り来む
ものならなくに
                 和泉式部

(つれずれと そらぞみらるる おもうひと あま
 くだりこん ものならなくに)

意味・・恋人の魂がそこに宿る空を、式部は、今日も
    仰ぎつつ思う。あの方が、天降っていらっし
    ゃればいいのに・・。だが、それは夢。夢と
    知りつつ、なお、心はあきらめきれない。

    亡くなった夫の敦道親王を偲んだ歌です。

意味・・何をするという事もなく物思いをしながら空を
    仰いでいます。恋しく思っているあの方が空か
    ら天降るというわけでもありませんのに。

    深い嘆きを心に秘めながらも、ただ空を眺める
    という、静かな動作に、叶えられない恋を懐か
    しむ女性の姿を詠んでいます。

 注・・つれづれ=所在ない状態を示す語。はかなさ、
     わびしさ、哀愁といった心が底にただよう
     状態。
     るる=自発の助動詞。自然と・・してしまう、
     ・・せずにはいられない。
    天降り=天から降る。
    ならなくに=・・というわけでもないのに。

作者・・和泉式部=いずみしきぶ。年没年未詳、977
        年頃の生まれ。

出典・・和泉式部歌集。