名にしおはば いざ尋ねみん 逢坂の 関路ににほふ
花はありやと
                  源実朝
             
(なにしおわば いざたずねみん おうさかの せきじに
 におう はなはありやと)

意味・・逢うという名を持っているならば、さあ、尋ねて
    みよう。逢坂の関の山路に美しく咲いている花に
    逢えるだろうか、と。

    同じ人が同じ花を見ても、心の状態により、同じ
    ように見えないものです。悲しい時に見る花は心
    を癒されるかも知れません。思い悩んでいる時は
    花は目に入らないかも知れません。嬉しい時は花
    を見て美しいと思うことでしょう。

    今自分が歩んでいるこの道は、いつか喜びをかみ
    しめて美しく花を見る事が出来るかどうか、尋ね
    て見たい。

 注・・逢坂=山城国(京都府)と近江国(滋賀県)の境。古
     く関所があった。
    関路=関所近くの路。
    にほふ=美しく色づく。
    ありやと=健在であるか。花は健在でそれに逢える
     かの意。

作者・・源実朝=みなもとのさねとも。1192~1219。28歳。
    12歳で三代将軍になる。鶴岡八幡宮で暗殺される。

出典・・金槐和歌集・544。