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剣岳の最大の難所


六十七歳の 老のよろこびを 誰に告げむ 剣岳の上に
けふ岩を踏む
                    松村英一 

(ろくじゅうななさいの おいのよろこびを たれにつげん
 つるぎのうえに きょういわをふむ)

意味・・老いを自覚しだした67歳になる中で、念願の剣岳の
    頂上の岩を今日踏んだ。この嬉しさは誰が分かって
    くれるだろうか。

    英一が三千メートル級の山に登りだしたのは六十歳
    を過ぎてからで、やっと待望の剣岳の登頂を、老い
    を自覚する六十七歳になって出来た事と、長年の憧
    れが只今実現したという喜びを詠んでいます。

 注・・剣岳=北アルプス北部の立山連峰にある2999mの山。
     日本百名山の一つ。一般登山者が登る山で、多く
     の岩場があり危険度の最も高い山とされている。

作者・・松村英一=まつむらえいいち。1889~1981。高等小
     学校中退。窪田空穂に師事。

出典・・歌集「雲の座」。