花めきて しばし見ゆるも すずな園 田盧の庵に
咲けばなりけり
橘曙覧
(はなめきて しばしみゆるも すずなその たぶせの
いおに さけばなりけり)
いおに さけばなりけり)
意味・・春の七草のひとつ、すずながいかにも美しく
咲いておりますが、それはこんな田舎の粗末
な庵に咲いているからこそ、美しく見えるの
でございます。私ごとき者をお城に呼んでい
ただいても、不似合いなだけでございますよ。
咲いておりますが、それはこんな田舎の粗末
な庵に咲いているからこそ、美しく見えるの
でございます。私ごとき者をお城に呼んでい
ただいても、不似合いなだけでございますよ。
福井藩藩主松平春嶽(しゅんがく)は曙覧の庵
に使者を送り、仕官するように求めた。登城
させて古典や和歌の講義、また、風雅な心を
学ぼうとしたのであるが、曙覧は春嶽の依頼
を断るために詠んだのがこの歌です。
に使者を送り、仕官するように求めた。登城
させて古典や和歌の講義、また、風雅な心を
学ぼうとしたのであるが、曙覧は春嶽の依頼
を断るために詠んだのがこの歌です。
曙覧が宮仕えをしていたなら、貧しい一家の
生活はさぞかしうるおったことであろう。
同時に、はかりしれない名声も得たことだろ
う。しかし、彼はそうしなかった。富と名声
ではなく、あえて自由な境地を選んだのだっ
た。そして、国学を学びながら和歌や書を楽
しんだ。好きな時に好きな事をして生きたの
であった。
生活はさぞかしうるおったことであろう。
同時に、はかりしれない名声も得たことだろ
う。しかし、彼はそうしなかった。富と名声
ではなく、あえて自由な境地を選んだのだっ
た。そして、国学を学びながら和歌や書を楽
しんだ。好きな時に好きな事をして生きたの
であった。
注・・しばし=少しの間。
園=畑。
田盧の庵(たぶせのいお)=田畑の中に造った
仮小屋。
園=畑。
田盧の庵(たぶせのいお)=田畑の中に造った
仮小屋。
作者・・橘曙覧=たちばなあけみ。1812~1868。早く
父母に死に分かれ、家業を異母弟に譲り隠棲。
福井藩の重臣と親交。
父母に死に分かれ、家業を異母弟に譲り隠棲。
福井藩の重臣と親交。
出典・・岩波文庫「橘曙覧全歌集」。